「力を入れると腰が反ってしまう。」
「トレーニングをしているのに、体幹が安定しない。」
「試合前になると緊張して、身体が固まる。」
「練習後も興奮が残り、なかなか落ち着かない。」
このような選手は、一度呼吸を見直してみてもいいかもしれません。
呼吸というと、肺活量や持久力をイメージする方が多いと思います。
しかし、呼吸に関わる横隔膜やお腹まわりの筋肉は、体幹の安定にも関係しています。
また、ゆっくりとした呼吸は、試合前の緊張や練習後の興奮から、身体を落ち着いた状態へ切り替えるためにも活用できます。
ゆっくりした呼吸は、心拍変動などの自律神経に関係する指標を変化させることが報告されています。
呼吸だけで競技力が急激に上がるわけではありません。
それでも、力を伝えやすい身体をつくり、必要なときに力を抜くための土台として、呼吸は見直す価値があります。
呼吸に一つの正解があるわけではない
呼吸は、いつでもゆっくり行えばいいわけではありません。
大切なのは、状況に合わせて切り替えられることです。
休んでいるときや眠る前には、静かで穏やかな呼吸が適しています。
一方で、全力で走るときや重いものを持つときには、身体を動かし、力を発揮するための呼吸が必要です。
つまり、
- 休むときの呼吸
- 力を出すときの呼吸
- 試合前に気持ちを整える呼吸
- 練習後に興奮を落ち着かせる呼吸
では、それぞれ役割が違います。
問題なのは、休んでいるときまで肩や首に力が入り、速く浅い頑張る呼吸が続いていることです。
呼吸と体幹はつながっている
横隔膜は、呼吸を行う中心的な筋肉です。
さらに、腹筋群などと協力して身体を支える働きにも関わっています。
野球の投球やバッティング、ゴルフスイングでは、下半身で生み出した力を体幹を通して腕や道具へ伝えます。
呼吸が乱れ、肋骨や腰の位置が安定しなければ、その力をうまく受け止められないことがあります。
必要なのは、体幹を常にガチガチに固めることではありません。
動きながら身体を支え、下半身の力を次へつなげられることが大切です。
吐きにくい選手に見られる身体の状態
息をゆっくり最後まで吐きにくい選手では、
- 肋骨が前へ開いている
- 腰が反っている
- 胸や肩ばかりが動く
- お腹に力を入れにくい
- 息を吐くとすぐ苦しくなる
といった状態が見られることがあります。
肋骨が開いて身体が反り返ったままでは、お腹まわりの筋肉を使いにくくなる場合があります。
その状態で投げる、振る、走るといった動作を行うと、腰に負担が集まったり、下半身からの力を体幹で受け止めにくくなったりする可能性があります。
もちろん、呼吸だけが腰痛やパフォーマンス低下の原因ではありません。
練習量、疲労、筋力、可動性、技術なども関係します。
もっと吸うより、まずゆっくり吐いてみる
呼吸が浅いと感じると、
「酸素が足りないから、もっと大きく吸おう。」
と考えがちです。
しかし、健康な人の多くは、安静時に酸素をまったく取り込めていないわけではありません。
酸素は血液中のヘモグロビンによって運ばれます。
そして、組織で二酸化炭素が増えると、ヘモグロビンは酸素を手放しやすくなります。
これをボーア効果といいます。
つまり、酸素はたくさん吸い込めば、それだけ細胞へ届くという単純なものではありません。
必要以上に速く呼吸すると二酸化炭素が減りすぎ、めまいや息苦しさ、手足のしびれなどにつながることもあります。
そこで、まず意識したいのが、
大きく吸うことより、ゆっくり静かに吐くこと。
ゆっくり吐いて呼吸の速さを落ち着かせることで、二酸化炭素を必要以上に失いにくくなり、酸素を組織へ渡すためのバランスも保ちやすくなります。
また、吐く動作によって、
- 肋骨が下がりやすくなる
- お腹まわりの筋肉を感じやすくなる
- 次の息を無理なく吸いやすくなる
- 肩や首の力を抜きやすくなる
といった変化も期待できます。
吸う前に、まず吐く。
ただし、力いっぱい吐き切るのではありません。
苦しくならない範囲で、細く、長く、静かに吐くことが大切です。
ゆっくりした呼吸は、緊張からの切り替えにも使える
試合前や大事な場面では、
- 心拍数が上がる
- 呼吸が速くなる
- 肩や首に力が入る
- 頭の中が落ち着かない
といった変化が起こります。
緊張を完全になくす必要はありません。
適度な緊張は、競技で力を発揮するためにも必要です。
しかし、興奮しすぎて身体をコントロールできない場合には、ゆっくりした呼吸が切り替えのきっかけになります。
アスリートを対象とした研究でも、1分間に5〜7回程度のゆっくりした呼吸が、心臓の副交感神経活動に関係する指標を高める可能性が示されています。
試合前に身体が固まっているとき。
練習後も興奮して落ち着かないとき。
眠る前に頭が冴えているとき。
そのような場面で、呼吸を使ってみましょう。
自分の呼吸を確認してみよう
仰向けになり、膝を曲げます。
片手を胸に、もう片方を肋骨からお腹のあたりに置いてください。
その状態で、普段どおり呼吸してみます。
確認したいのは、
- 肩ばかり持ち上がっていないか
- 息を吐くと肋骨が内側へ戻るか
- 腰を強く反らずに呼吸できるか
- 吸うときに身体へ力が入りすぎていないか
- 呼吸後にめまいや苦しさが出ないか
です。
息を止められる時間だけで、呼吸の良し悪しや競技力を判断することはできません。
我慢比べではなく、身体に余計な力を入れず、穏やかに呼吸できるかを確認しましょう。
アスリートにおすすめの呼吸エクササイズ
仰向け90度呼吸
- 仰向けになり、椅子や壁に足を乗せる
- 股関節と膝を約90度にする
- 腰を床へ押しつけ、腰を反らないようにする
- 鼻から5秒かけて静かに吸う
- 鼻から5秒かけてゆっくり吐く
- 吐いたあと5秒止める
- 同じ呼吸を繰り返す
眠くなる、身体がポカポカする、肩の力が抜けるなど、落ち着いた変化を感じるまで行います。
変化が分かりにくい場合は、最初から長く続けようとせず、2〜5分程度を目安にしても構いません。
息を止めることで強い苦しさが出る場合は、3秒-3秒-3秒のように短くしてください。
めまい、息苦しさ、手足のしびれなどが出た場合は中止します。
練習前に身体の位置を整えたいとき、試合前に興奮を落ち着かせたいとき、練習後や就寝前にリラックスしたいときに取り入れてみてください。
風船を使う呼吸エクササイズ
Acegymでは、選手の状態によって風船を使うこともあります。
風船を膨らませるには、ある程度長く息を吐く必要があります。
その抵抗によって、
- 息を吐く感覚
- 肋骨が下がる感覚
- お腹まわりに力が入る感覚
をつかみやすくなる人がいます。
ただし、風船は全員に必要なものではありません。
強く吹こうとして顔や首に力が入ったり、めまいが出たりすれば逆効果です。
まずは道具を使わず、穏やかに吐く練習から始めましょう。
呼吸だけで競技力が上がるわけではない
呼吸エクササイズをすれば、すぐに球速や飛距離が伸びるわけではありません。
競技力を高めるためには、
- 筋力
- パワー
- スピード
- 技術
- 可動性
- 睡眠
- 栄養
なども必要です。
呼吸は、それらの代わりになるものではありません。
身体の位置を整え、体幹を使いやすくし、必要なトレーニングに取り組みやすい状態をつくるものです。
呼吸で整える。
筋力トレーニングで鍛える。
競技練習で技術へつなげる。
この流れで考えることが大切です。
Athlete Note
今回のポイント
- 呼吸には一つの正解ではなく、状況に合わせた使い分けが必要
- 横隔膜は呼吸だけでなく、体幹の安定にも関わる
- 息を吐きにくい選手では、肋骨の開きや腰の反りが見られることがある
- 多くの場合、酸素をただ多く吸えばいいわけではない
- 過剰な呼吸を抑え、二酸化炭素を失いすぎないことも大切
- まずは大きく吸うより、静かにゆっくり吐く
- ゆっくりした呼吸は、試合前や練習後の切り替えに使える
- 呼吸だけに頼らず、筋力・技術・睡眠・栄養と組み合わせる
まとめ
呼吸は、毎日無意識に繰り返している動作です。
だからこそ、乱れていても自分では気づきにくいものです。
肩や首ばかりを使っている。
肋骨が開いたまま、うまく息を吐けない。
試合前になると呼吸が速くなり、身体に力が入る。
そのような状態があるなら、まずはゆっくり吐くところから始めてみてください。
呼吸は競技力を一気に高める魔法ではありません。
それでも、
下半身で生み出した力を伝える体幹
試合前の緊張を整えるための切り替え
練習後に回復へ向かうための準備
を支える大切な土台です。
Acegymから
福岡県久留米市のAcegymでは、筋力や可動域だけでなく、呼吸、肋骨、骨盤、体幹の使い方も確認します。
同じように息を吐きにくくても、その理由や必要なエクササイズは人によって違います。
「力を入れると腰が反ってしまう」
「体幹トレーニングをしても、競技につながる感覚がない」
「試合前に緊張して身体が固まる」
「練習後も興奮が残り、うまく休めない」
そんな選手や保護者の方は、ぜひ一度ご相談ください。
呼吸だけを変えるのではなく、呼吸を競技で使える身体づくりへつなげていきます。
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