【野球選手にピラティスは必要?】トップ選手も取り入れる理由を身体の仕組みから解説

野球

近年、プロ野球でもピラティスをトレーニングに取り入れる選手が見られるようになりました。

福岡ソフトバンクホークスの近藤健介選手も、その一人です。

近藤選手は、オフシーズンだけでなく、シーズン中のルーティンとしてピラティスに取り組む様子も紹介されています。

実際のトレーニングはこちらの動画で確認できます。

▶︎ 近藤健介選手のピラティストレーニング

では、なぜ日本を代表するトップレベルの打者が、シーズン中もピラティスを続けているのでしょうか。

大切なのは、

「近藤選手がやっているから、ピラティスをやれば打てるようになる!」

という話ではありません。

考えたいのは、

なぜ高い競技力を持つ選手が、筋力トレーニングや技術練習だけでなく、身体を整えるトレーニングも取り入れているのか?

ということ。

ピラティスの目的は、単に身体を柔らかくすることではありません。

野球で鍛えた力を発揮するために必要な、身体の動きや安定性、コントロール能力を高めることに役立ちます。

今回は、野球選手にピラティスが必要とされる理由を、身体の仕組みから解説します。


野球は筋力だけで決まる競技ではない

「もっと強い打球を打ちたい!」

「スイングスピードを上げたい!」

「球速を伸ばしたい!」

そう考えて、筋力トレーニングに取り組む選手は多いと思います。

もちろん、競技力を高めるうえで筋力は重要です。

大きな力を生み出すためには、下半身や体幹をはじめとした全身の筋力が欠かせません。

しかし、筋力を高めるだけで、必ずスイングスピードや球速が伸びるとは限りません。

仮に大きな力を持っていても、その力をバットやボールまで効率よく伝えられなければ、競技の中で十分に発揮できないからです。

野球で求められるのは、

力を持っていることと、その力を競技動作へつなげられること

の両方です。

筋力トレーニングで身体のエンジンを大きくしても、身体の動きがうまくつながっていなければ、その力を十分に使えない可能性があります。

だからこそ、鍛えることと同時に、鍛えた身体を思い通りに動かす能力が必要になります。


バッティングも投球も全身の連動で行われる

バッティングは、腕だけでバットを振る動作ではありません。

投球も、肩や腕だけでボールを投げる動作ではありません。

身体は、地面から得た力を複数の部位へ順番に伝えながら動いています。

バッティングで考えると、力はおおまかに次のような流れで伝わります。

地面を押す

下半身で力を受け止める

骨盤が回旋する

体幹・胸郭が回旋する

肩甲骨・腕へ伝わる

バットが加速する

このように、身体の各部位が連続して動き、力を次の部位へ伝えていくことを、キネティックチェーン(運動連鎖)といいます。

投球でも基本的な考え方は同じです。

下半身や体幹で生み出した力を、胸郭、肩甲骨、腕、手指へとつなぎ、最後にボールへ伝えます。

この連動の途中に、

  • 動きにくい部位
  • 安定しない部位
  • タイミングが合っていない部位
  • 力を受け止められない部位

があると、力が途中で逃げたり、特定の関節へ負担が集中したりします。

野球のパフォーマンスを考えるうえでは、筋力だけでなく、全身がどのようにつながって動いているかを見る必要があるのです。


ピラティスは柔軟性だけを高める運動ではない

ピラティスと聞くと、

「身体を柔らかくする運動」

「女性が姿勢を整えるために行うもの」

というイメージを持つ方もいるかもしれません。

しかし、ピラティスの大きな特徴は、柔軟性だけではなく、身体をコントロールする能力を高めることにあります。

例えば、野球選手に必要となるのは、単に股関節が柔らかいことではありません。

実際のプレーでは、

  • 股関節を必要な方向へ動かす
  • 動きながら身体を支える
  • 片脚で力を受け止める
  • 骨盤と胸郭を別々に動かす
  • 体幹を安定させながら腕を動かす

といった能力が求められます。

可動域があっても、その範囲を自分でコントロールできなければ、競技ではうまく使えません。

反対に、筋力が強くても、必要な部位が動かなければ、力の伝達が途中で止まる可能性があります。

ピラティスでは、呼吸や体幹の安定を意識しながら、股関節、胸郭、肩甲骨などを協調させて動かします。

そのため、単に柔らかくするのではなく、使える可動域を増やし、自分の身体を思い通りに動かすための練習として活用できます。


野球選手に重要な股関節の役割

バッティングでも投球でも、股関節は重要な役割を持っています。

下半身で地面を押し、その力を受け止めながら、骨盤の回旋へつなげるためです。

しかし、股関節が十分に動かなかったり、片脚で身体を支えられなかったりすると、骨盤をうまく回旋させにくくなります。

その結果、

  • 腰を過剰に回す
  • 上半身だけで動こうとする
  • 踏み出し足で力を受け止められない
  • スイングや投球の軸が安定しない

といった代償動作が起こることがあります。

ピラティスでは、股関節を動かすだけでなく、骨盤や体幹を安定させながら股関節を使う練習ができます。

野球で必要なのは、ただ柔らかい股関節ではありません。

力を生み出し、受け止め、次の動きへつなげられる股関節です。


胸郭が動くことで力を伝えやすくなる

胸郭とは、胸まわりの部分を指します。

バッティングや投球では、骨盤と胸郭が常に一緒に動くわけではありません。

骨盤が先に動き、胸郭や腕が少し遅れて動くことで、身体にひねりが生まれます。

この骨盤と胸郭の動きの差は、スイングや投球で力を生み出すうえで重要です。

しかし、胸郭が硬く、十分に回旋できない場合は、

  • 腰を過剰にひねる
  • 肩だけで動こうとする
  • 腕が早く前へ出る
  • 力がバットやボールへ伝わりにくい

といった問題につながることがあります。

ピラティスでは、骨盤を安定させた状態で胸郭を動かしたり、呼吸を使いながら胸まわりの動きを引き出したりします。

胸郭の可動性を高めるだけでなく、骨盤と胸郭を別々にコントロールする能力を身につけることが、競技動作へつなげるためには重要です。


肩甲骨は腕を動かすための土台になる

野球では、肩や腕を大きく使います。

しかし、腕は肩関節だけで動いているわけではありません。

肩甲骨が胸郭の上をスムーズに動くことで、腕を大きく動かしやすくなります。

肩甲骨の動きが不十分なまま、何度もスイングや投球を繰り返すと、肩や肘などへ負担が集中する可能性があります。

特に投球では、肩甲骨、胸郭、体幹、下半身が連動することが重要です。

腕だけを強く振ろうとしても、下半身や体幹からの力が伝わらなければ、肩や肘への負担が大きくなりやすくなります。

ピラティスでは、肩甲骨を固定しすぎるのではなく、体幹を安定させながら必要な方向へ動かす練習を行います。

これは、投球やバッティングで腕を効率よく使うための土台づくりにつながります。


体幹は固めるだけでは足りない

野球選手に体幹トレーニングが必要だという話は、よく聞くと思います。

ただし、体幹は単に固めればよいわけではありません。

野球では、体幹を安定させながら、

  • 身体を回す
  • 片脚で支える
  • 力を受け止める
  • 下半身から上半身へ力を伝える
  • 動きを止める

といった複数の能力が求められます。

プランクを長時間できることと、実際のスイングや投球で体幹を使えることは同じではありません。

競技では、動きの中で必要なタイミングに安定し、必要なタイミングに動くことが重要です。

ピラティスでは、呼吸や手足の動きを組み合わせながら、体幹を安定させる練習を行います。

そのため、体幹をただ固めるのではなく、動作の中でコントロールする能力を高めることに役立ちます。


ピラティスだけで競技力が上がるわけではない

ここは誤解しないようにしたい部分です。

ピラティスをすれば、必ずスイングスピードや球速が上がるわけではありません。

競技力を高めるためには、

  • 技術練習
  • 筋力
  • パワー
  • スピード
  • 可動性
  • 安定性
  • 身体のコントロール
  • 栄養や睡眠

など、さまざまな要素が必要です。

ピラティスは、その中でも主に、

身体を動かしやすくし、鍛えた力を発揮するための土台を整える役割

を担います。

筋力が不足している選手には、筋力トレーニングが必要です。

速く力を出す能力が足りない選手には、ジャンプやメディシンボールスローなどのパワートレーニングが必要になる場合もあります。

ピラティスだけですべてを解決するのではなく、選手に必要なトレーニングの一つとして取り入れることが大切です。

だからこそ、Acegymではピラティスと筋力トレーニングを組み合わせています。


スイングスピードアップとの関係

スイングスピードを高めるためには、腕を速く振るだけでは不十分です。

重要になるのは、

  • 地面へ力を加える下半身の筋力
  • 踏み出し足で力を受け止める能力
  • 骨盤から胸郭、腕へ力を伝える連動性
  • 骨盤と胸郭の回旋差
  • バットを正確にコントロールする能力

などです。

ピラティスは、地面へ加える力そのものを大きくするトレーニングではありません。

一方で、股関節や胸郭を動かしやすくすることや、体幹を安定させること、骨盤と胸郭を別々に動かす能力を高めることによって、下半身で生み出した力をバットへ伝えやすい身体づくりにつながります。

つまり、

筋力トレーニングで力を高め、ピラティスでその力を使いやすい身体をつくる

という組み合わせが重要です。


球速アップとの関係

球速を高めたい選手ほど、腕を強く振ろうとすることがあります。

しかし、大きな力を生み出す中心は、下半身や体幹です。

腕は、下半身と体幹から伝わった力を、最終的にボールへ届ける役割を持っています。

股関節や胸郭が十分に動かなかったり、体幹が安定しなかったりすると、腕だけで投げる動作になりやすくなります。

その状態で投球数を増やせば、肩や肘への負担も大きくなる可能性があります。

ピラティスによって、

  • 股関節を使う
  • 胸郭を回す
  • 肩甲骨を動かす
  • 体幹を安定させる
  • 全身の動きをコントロールする

といった土台を整えることは、下半身で生み出した力をボールへ伝えやすくするために役立ちます。

ただし、球速アップには筋力やパワー、投球技術なども必要です。

ピラティスは、その力を競技で発揮するための身体づくりとして活用します。


ケガの予防という視点でも身体全体を見る

野球では、肩、肘、腰などへ繰り返し負担がかかります。

ただし、痛みがある場所だけに原因があるとは限りません。

例えば、胸郭が十分に動かない場合、肩関節がその動きを補おうとする可能性があります。

股関節が動かなければ、腰が過剰に回旋することがあります。

下半身や体幹からの力をうまく伝えられなければ、腕へ負担が集中することも考えられます。

このように、動きにくい部位があることで、別の部位が頑張りすぎることがあります。

ピラティスで身体の使い方や各部位の連動を整えることは、一部の関節だけに負担が集中しにくい身体づくりにつながります。

もちろん、ピラティスをすればすべてのケガを防げるわけではありません。

練習量、投球数、疲労、技術、睡眠、栄養なども関係します。

それでも、長く野球を続けるためには、鍛えるだけでなく、自分の身体がどのように動いているかを知ることが大切です。


同じ野球選手でも必要なトレーニングは違う

「野球選手にはこのピラティスをやればよい」

という決まった答えがあるわけではありません。

同じ競技をしていても、選手によって課題は異なります。

例えば、

  • 筋力が不足している選手
  • 股関節が動きにくい選手
  • 胸郭が回りにくい選手
  • 肩甲骨の動きに課題がある選手
  • 片脚で安定できない選手
  • 身体の左右差が大きい選手
  • 力を発揮するタイミングに課題がある選手

では、必要なトレーニングは同じではありません。

身体が柔らかい選手に、さらにストレッチだけを増やしても、競技力につながらない可能性があります。

反対に、動きは良くても筋力が足りない選手には、しっかりと筋力トレーニングを行う必要があります。

だからこそ、流行しているトレーニングをそのまま真似するのではなく、自分に何が必要なのかを評価することが大切です。


Acegymでは評価してからトレーニングを組み立てる

Acegymでは、野球選手だから全員に同じメニューを行うことはありません。

まず確認するのは、

  • 股関節の可動性
  • 胸郭の回旋
  • 肩甲骨の動き
  • 体幹の安定性
  • 左右差
  • 片脚でのバランス
  • 力を受け止める能力
  • 全身の連動性

などです。

そのうえで、必要な部分をピラティスで整え、筋力トレーニングやパワートレーニングによって鍛えます。

Acegymが大切にしているのは、

整えてから鍛える

という考え方です。

ただ身体を柔らかくするのでも、ただ筋力をつけるのでもありません。

その選手が持っている力を競技で発揮しやすい身体をつくることを目指します。


Athlete Note

今回のポイント

  • 野球は腕だけではなく、全身の連動でプレーする競技
  • 筋力を高めるだけでなく、その力をバットやボールへ伝える能力が必要
  • ピラティスは柔軟性だけでなく、身体のコントロール能力を高めるために活用できる
  • 股関節、胸郭、肩甲骨、体幹の働きがバッティングや投球の土台になる
  • ピラティスだけで競技力が上がるわけではなく、筋力やパワー、技術練習との組み合わせが重要
  • 同じ野球選手でも身体の課題は異なるため、評価して必要なトレーニングを選ぶことが大切

まとめ

近藤健介選手のようなトップレベルの選手がピラティスを取り入れているのは、単に身体を柔らかくするためではありません。

野球では、

  • 力を効率よく伝えられる身体
  • 自分の身体を思い通りに動かせる能力
  • 動きながら安定できる体幹
  • 一部の関節だけに負担を集中させない全身の連動

が求められるからです。

筋力トレーニングによって力を高めることは重要です。

同時に、その力を競技で発揮するための身体づくりも欠かせません。

ピラティスと筋力トレーニングは、どちらか一方を選ぶものではなく、それぞれの役割を理解して組み合わせることが大切です。


今後も野球選手の身体づくりを発信します

この記事は、Acegym Athleteで初めて扱う野球の記事です。

今後は、

  • スイングスピードを高める身体づくり
  • 球速アップに必要な下半身と体幹の役割
  • 地面反力とバッティングの関係
  • 骨盤と胸郭の捻転差
  • 野球選手に多い肩・肘・腰の負担
  • 走力を高めるための腕振り
  • 視覚機能と競技パフォーマンス
  • アスリートの栄養と補食

など、野球の競技力向上につながる情報を、身体の仕組みから分かりやすく発信していきます。

「何となくトレーニングする」のではなく、

なぜこのトレーニングが必要なのかを理解して取り組むこと。

このブログが、選手や保護者、指導者の方にとって、身体づくりを考えるきっかけになればうれしいです。


Acegymから

福岡県久留米市のAcegymでは、一人ひとりの身体の状態や競技特性を評価し、ピラティスと筋力トレーニングを組み合わせた身体づくりを行っています。

「スイングスピードを高めたい」

「球速アップに必要な身体づくりを知りたい」

「筋トレをしているけれど、競技につながっている実感がない」

「ケガへの負担を抑えながら、長く野球を続けたい」

そんな方は、お気軽にご相談ください。

ただトレーニングを増やすのではなく、今の自分に何が必要なのかを知ることから、一緒に始めていきましょう。

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